耳管は耳と鼻を繋いでいる、3〜4cm程度の細長い管です。耳管は普段は閉じていますが、唾をゴクッと飲み込む、またはあくびをした時に瞬間的に開き、すぐに閉じてしまいます。この短時間に空気が出入りして外界と中耳圧の調整が行われます。この開閉には耳管周囲の血液循環、脂肪、筋肉の3つが関与しています。
風邪をひいたり、鼻が詰まったりすると耳管が狭くなり、耳管狭窄症という病気になることがよくあります。耳が詰まった感じや耳閉感、自分の声が響いたりする耳管機能障害が起こります。しかし耳管機能障害は耳管開放症でも起こることが分かってきました。当院ではどちらの病気も正確に診断し、診断結果に基づいて治療を行っていきます。
耳管開放症の原因と症状
過去にダイエットなどで急激な体重減少を経験されて耳管周囲の脂肪量が減少している場合や、動脈硬化や低血圧による耳管周囲の血液循環障害がある場合や、ストレス・自律神経失調症・更年期により耳管機能低下がある場合など3つの原因が挙げられます。普段は閉じている耳管が常時開放状態になることで、耳が詰まった感じや耳閉感があらわれます。ひどくなると呼吸音がザーザーと聞こえ、めまいや肩こりがひどくなります。女性では妊娠や更年期や経口ピルも耳管機能に影響を与えます。
耳管開放症の診断
体位変化検査
自覚症状は体位により変化します。立位や坐位で出現していた症状は、布団に横になったり、深くおじぎをするように頭を下げたりすると、症状が軽くなるというのが診断のポイントとなります。
鼓膜呼吸性動揺検査
呼吸にともない鼓膜が動揺する様子を観察します。指で良い側の鼻孔を塞いで、患側の鼻孔から大きく深呼吸してもらうと検出しやすくなります。
立位CT検査
耳管の構造上の異常がないか把握します。仰向けで撮影する通常のCTでは耳管が閉じているため判別が難しくなります。立位で撮影することが重要であり、当院では立位CTを導入しています。
内視鏡検査
鼻の奥にある耳管開口部を内視鏡で観察します。耳管開放症では耳管は座位で大きく開き、おじぎするように頭を下げると耳管が閉じる現象が観察されます場合があります。
耳管機能検査
耳管の開閉する様子をリアルタイムで計測します。
① スピーカーを鼻の穴へ差し込み、耳栓を同じ方の耳にしっかり差し込みます。
② スタッフの合図でゴクンと唾液を飲み込んでください。
③ 耳管が正常の場合、グラフに山形の波形が現れます。
左図は正常の波形です。右図は耳管の具合が悪い例です。
耳管開放症の治療
生活指導
体重減少が原因の場合は、栄養をしっかり摂って体重を落とさないこと、水分をしっかり摂ることが大切です。スカーフ療法も有効です。これは症状が出現した時に、首に巻いているスカーフ、男性であればネクタイを自然な動作で少し締める方法です。たとえば会話中に突然症状が出た時の対処法として有効です。
内服薬治療
耳管周囲の血流を増やす作用がある薬が使用されます。アデノシン三リン酸二ナトリウム水和物や漢方薬の有効性が知られています。
生理食塩水点鼻療法
生理食塩水の点鼻が有効な例があります。この方法は耳管を生理食塩水で塞ぐもので、頭部をやや後屈したポジションをとり、さらに健側に頭部を約45度回旋した位置で(患側が下に位置します)、生理食塩水を患側の鼻内へ滴下する方法です。
手術療法
症状がつらい場合、シリコン製の栓を耳管の中に入れる耳管ピン挿入術や鼓膜換気チューブ留置術を行なうこともあります。これらの手術は施術可能施設へご紹介します。